ダイジェストDigest
A分科会 参加と共同の学校づくり
A分科会には32本のレポートが寄せられました。再編から3年目となる今年、登校拒否・不登校関連のレポートを3つの分散会のすべてで共有することとし、2日目午後に総括討論を復活させる形で全体会を運営しました。
1日目午前の全体会では、共同研究者の石井拓児さんと福嶋尚子さんが討論の呼びかけを行いました。石井さんは、教育改革が本来目指す「学びと育ちの場」としての学校を支えるどころか、財政削減や統廃合、企業的手法の導入により子どもの居場所を奪い、不登校を増加させている現状を批判しました。授業時数の増加や学習内容の過剰化、観点別評価や難化するテストにより、子どもたちが「評価のまなざし」にさらされ続けていると指摘する一方で、カリキュラム精選の実践を紹介し、子どもの発達段階に即した教育課程づくりの必要性を訴えました。最後に、関係的に子どもの権利を捉え、声にならない子どもの声に耳を傾けることこそが学校づくりの中心であるとし、子どもを真ん中に教職員・保護者・地域が結びつき「参加と共同の学校づくり」を進める意義を強調しました。
福嶋さんは、家庭の教育費負担が子どもの学びを阻害していることを具体的なデータで示しました。制服や修学旅行費など多額の私費が必要となり、不登校児の給食費や制服購入といった「必要だが無駄になる」出費も、不安を抱く保護者をさらに追いつめる事態をもたらしていると指摘しました。その上で、教育に関わる負担の無償化が質の低下や学校への統制の強まりにつながるおそれに留意しつつ、権利保障の観点から教育の公的保障を実質的に拡充し、学校づくりの基盤を立て直す取り組みが不可欠と訴えました。
「討論の呼びかけ」の後は、奈良のレポート(小)「子どもたちのほんとうの声に出会いたい」が報告されました。奈良教大附小から強制的に出向させられた公立小学校での実践を振り返ったレポートを分科会全体で共有する意義について、共同研究者の山岡雅博さんは、公立学校でレポーターが『浦島太郎状態』と感じたこと──教育改革のなかで現場の統制が強まり、子どもたちが管理・統制されるなかで『子ども期』を喪失してしまう動き──に対し、自らの専門性に根ざして「ほんとうの声」との出会いを模索する実践を通じて抗った点にあると指摘し、今日の学校が直面する課題とその乗り越えの道筋について、各分散会でさらに議論を深めて欲しいと呼びかけました。
今年は多数のレポートが寄せられ、すべてを紹介するだけの紙幅がないため、各分散会からいくつかのレポートを抜粋して紹介し、まとめに代えさせていただきます。第1分散会では、安心できる学級づくりや不登校生徒への寄り添いに関する実践が多く紹介されました。青森のレポート(高)の「生徒にとって居心地の良いクラス(づくり)」では、厳しい指導で子どもを傷つけてしまった経験を踏まえ、非難しない指導に転換した実践が報告されました。また、兵庫のレポート(高)の「不登校生徒との関わり」では、非常に繊細な不登校傾向の生徒を立場を異にする複数の大人で支える重要性が示されました。滋賀の中学校の報告「体育大会から体育祭へ」では、順位を競う大会から子ども主体の体育祭への転換が学校文化を変える契機となったことが示されました。板橋青空学校の長年にわたる実践は、子どもたちのやりたい学級づくり・行事づくりの取り組みが学校外でも展開可能で、参加と共同の学校づくりのヒントが多数あることを教えてくれました。
第2分散会では、不登校や居場所づくりに関わる報告が注目されました。埼玉県「不登校・引きこもりを考える会」のレポートでは、担任や校長が家庭訪問や日常的な会話を通じて子どもの回復を支えた事例が報告されました。T高校生徒会の報告では、セクシャル・マイノリティをめぐる課題に向きあうための伝統行事の見直しや、地域と協力しゼロカーボンやフードロス削減を進める実践が紹介されました。愛知の報告(私学)では、保護者と高校生が協力して私学無償化の拡充を勝ち取った粘り強い運動が紹介され、地域と学校の共同の力の好例が示されました。
第3分散会では、学校の内外でケアの営みをどう編成するのかを問う実践、学校と地域との関係を再考する実践が印象に残りました。京都のレポート(児童館館長)の「居場所・児童館の取り組み」では、不登校児やしんどさを抱える子にとって児童館が安心できる生活の場となることが語られました。滋賀のレポート(小)の「子どもの力、教師の力」では、不登校傾向の子どもが友人や教師の支えを通じて回復していく過程が示され、教師が子ども同士をつなぐ存在であることが強調されました。山口のレポート(高)の「高校生版CSRの取り組み」では、伝統工芸や地域資源を活かし地域と関わり合う実践が紹介されました。
以上では充分に紹介できませんでしたが、3つの分散会のそれぞれで、優れた実践の基盤となる教育条件整備の取り組みや、管理・統制が進む学校現場の苦境を紹介するレポートが寄せられました。
2日目午後の総括討論は自由な感想交流の場として進められ、各分散会の報告に触発された意見が交換されました。最後に、共同研究者の宮下聡さんが「閉会のことば」を述べ、再編後の試行錯誤の様子を振り返り、課題はあるものの再編の趣旨に添った第一歩が踏み出せたのではないかと総括し、立場を異にする参加者が対等に互いをリスペクトしながら議論する姿勢の重要性があらためて確認されました。
以上のように、今年のA分科会は「子どもの声を聴くこと」「不登校や困難を抱える子への支援」「教育条件改善」「地域と共にある学校づくり」などをキーワードに、32本のレポートと自由討論を通じて実践と課題を共有する貴重な場となりました。