みんなで21世紀の未来をひらく 教育のつどい 教育研究全国集会

ダイジェストDigest

⑥美術教育 何を大切に考えて子どもの前に立つのか―民主的な人間の育成へ向けて―

1 基調提案
 美術教育には、いまを生きる子どもたちといまを生きるわたしたちが、美術をとおして人間らしく深まり合い、つながり合う営みがあります。試行錯誤しながらそうした営みを創り出す喜び、悩みをありのまま語り合いましょう。これは要項に記されている山室共同研究者の言葉です。このことにかかわって、柏倉共同研究者は基調提案で次のように述べています。理不尽な出来事も、不条理な状況も、生きていく力を弱めています。大人だから耐えられるかというと、そうではありません。人が安心して話ができる関係、聞いてもらえる空間を取り戻さないと、目の前の大切なことが流されていってしまう。

 

2 実践のよみひらきと共有
 実践報告等は9本。参加者は一日目が17人。二日目が11人でした。▼北海道の報告(高)「地域アイデンティティの造形表現」…地域性を大切に考え、北海道の東部地域(道東)の魅力を他者に伝達するための表現力を高める実践です。▼京都の報告(中)「総合の学習や生徒の実態に合わせた授業」…相手のことを大切に考え、地震等の被災地・輪島を支援するための実践です。▼兵庫の報告(小)「版画表現の可能性」…子ども一人ひとりが版表現の楽しさを体験できるようにした実践です。▼埼玉の報告(中)「詩のイメージを色と形で表す」…たどたどしいながらも伝えようとする生徒の思いを大切にした実践です。▼岡山の報告(高)「鑑賞教育における課題項目の改善」…鑑賞の時間を継続的に授業に位置づけています。表現とともに鑑賞を重視した実践です。▼大阪の報告(中)「中学二年生によるibis Paint Xアプリを使用したアイヌ紋様制作」…アイヌ紋様に着目して多様な文化を尊重する精神を育む実践です。▼東京の報告(小)「描くことを通じた自己表現」…多様な自己表現を可能にするための制作プロセスに配慮した実践です。▼高知の報告(中)「空想画」…「今までで一番気に入った作品になった」という言葉が生徒から出るような質の高い実践です。▼大阪の報告(中)「粘土で造形した作品をデッサンする」…「触る」「手で考える」「身体で覚える」など、美術教育で重視する観点を踏まえた実践です。

 【話題提供】
 山室共同研究者からは、奈教大附小での強制出向問題の裁判の和解成立に関する報告がありました。つながり合って、学び合って、子どもたちのために「みんなのねがいでつくる学校」を創造すること、その大切さを再認識する報告です。

 

3 総括討論
 総括として、民主的な人間の育成へ向けた実践の基軸を次のように示すことができます。

価値観の形成
 なぜなら、つながり合う営み、安心して話ができる関係、一人ひとりの思いや発想、地域性、表現と鑑賞(双方への眼差し)、多様な文化の尊重など、「何を大切に考えるのか」という指導者自身の価値観が「子ども自身がみずからの価値観を形成していく」という美術の授業につながっていくからです。