ダイジェストDigest
E分科会 子どもの人権と保育・学校・地域・家庭・図書館・文化活動
子どもの声を受けとめる教育実践者の役割
1.問題提起
各共同研究者から、①〈人権としての教育〉を実現するためには、「子どもの声を聴く」受容的応答関係づくり(日本国憲法26条・子どもの権利条約12条)と教職員の自己形成・人権保障を結びつける課題があること(森田報告)、②小学生の低学力問題が「スキーマ(暗黙知)を育てる幼保小連携の学びづくり」に課題があること(増田報告)、③「第3の領域」(居場所)の不登校支援の実践と研究が、子どもの声(views)を聴く応答関係のづくりの成果と課題を明らかしていること(生田報告)、④自由な時間こそ子どもが遊び・動き・仲間とつながり参加・自立する主体になりゆく教育実践の重要課題であること(子どもの権利条約第31条)(齋藤報告)、⑤教育内容の画一性を再考し多様な子どもの声Voice(感覚や価値観)を重視することが、子ども同士の対話を生みだす保育・教育実践の課題であること(塩崎報告)、等々について問題提起がありました。
2.報告
(1) ツールとしてのICT活用と学校図書館のあり方に関して、東京の報告(中)はGIGAスクール構想で公立小中学校一人一台端末を使用する状況の中で、子どもの学習や認識力・価値観の形成を問い、埼玉の報告(学司)は県立高校の図書館地域ネットワークの拠点校として授業連携と学校間ネットワークの意義と問題点を提起し、京都の報告(学司)は授業と連携したりBYOD(Bring Your Own Device)を教具として利用する学校図書館の学習支援活動の成果と課題を報告しました。
(2)通信制中学・定時制高校において学ぶことの意味に関して、東京の報告(中)は全国で唯一卒業資格の取れる通信制中学校からの実践と戦後の混乱期の義務教育未修了者のみならず、現代も虐待・不登校等によって学ぶ権利が奪われる人々の生涯にわたる学習する権利を保障する重要な役割を提案し、長崎の報告(高)は定時制高校に通う生徒の「自分自身を守るためにも、人権の知識」の獲得を目的とする人権教育・道徳教育の取り組み(総合的な探究の時間・特別活動)や定時制生徒の就学保障制度(給食無償支給・定通修学奨励資金等)を報告しました。
(3)子どもと向き合う保育・教育実践に関して、私学(神奈川)の報告(幼)は、「これおれがきったやつ」といって野菜を食べる子どもの興味を十分に聴き取る乳幼児保育実践には「したいことをあきらめない」学びへの構えを育てる価値があることを提案し、埼玉の報告(高)は、ファシリテーションの技法によって生徒の声を活かす自主的な図書委員会イベント実践と伴走する司書(教育実践者)の役割を提案し、香川の報告(小)は、「自分の思い通りにならないと、泣き喚き、暴力を振る」う特別支援学級の子どもの行為を発達課題のパニックとせず「意見表明の形」として捉えたアプローチと、そのなかで子どもが自分の思いを言葉にしていき次第に成長していく変容を報告しました。
(4)地域の課題に教職員組合はどう向き合うかに関して、大阪の報告(教組)は、学校統廃合、学校給食の完全無償化、学童保育料の軽減、PFOA汚染問題、少人数学級の実現、万博遠足強制の反対、市長選挙に抗してきた地域の教職組合運動の取り組みを報告し、子どもの人権としての教育環境・条件整備・子どもの生命の尊厳を守る課題の重要性を提案しました。
3.討論
討論では、全体として、学校のICT化を進める国策が深い認識力・思考力を培うことを阻む中で子どもの学び・発達する権利を実現する学校づくり・授業づくりの検証、学校図書館と授業が連携した活動、文化活動や自主的学習活動の展開、そして通信制・定時制教育での実践などを通して、教育への包摂性(インクールジョン)をどうつくるかが議論されました。
また、子どもの声・意見としての「views(子どもから見える景色や見え方・声:子どもの権利条約第12条)を聴き、受けとめることの重要性について言及されました。それは、まとまった「opinions」にまでは至らない、あるいは言葉として発せられていない思いや考えさえも、子どもの成熟度に応じ、向き合って、受けとめられ、受容されていくこと、同時に次第に子どもが「views」から「opinions」へと洗練させゆく幼保小中高から生涯への、人たるに値する普通教育・市民性教育の課題へ連なることも議論されました。
そして、子どもの教育を生存・幸福に生きる権利としてみる観点から、子どもの生きる地域問題が提起する教育環境・条件整備課題に応える教職員組合運動も、広義の意味で「子どもの声(願い)を受けとめる」役割を担うのではないかと議論されました。
以上の意味で、教育実践者の専門性をどう考えるのかも重要な論点として提起されました。