ダイジェストDigest
⑩家庭科教育
昨年度に引き続き、分科会のテーマは「子どもたちが生活を見つめ、いきいきとりくむ家庭科の学びをつくっていこう」である。はじめに共同研究者が分科会の基調を提案し、それを受けて参加者全員が自己紹介と現況の交流をおこなった。
基調提案では「戦後80年の節目に」と題して家庭科教育の変遷と背景を整理した。戦後に新設された家庭科だが、性別役割分業の思想により男女別、技能習得の教科として扱われる。男女平等を求める広範な人々によって「小・中・高校家庭科の男女共学必修」が実現したのは1994年。この年に「子どもの権利条約」も批准された。今、受験競争下で家庭科の単位数が減少、観点別評価の縛りで自主的創造的な授業が困難である。次期学習指導要領は、「情報活用能力の育成」「質の高い探求的な学び」をキーワードとし、中学校技術・家庭科は分離させる方向。家庭科は常に社会の変化、国の家庭政策に対応させられてきた。今後どうなるのか、どうするのか、実践の主体者は子どもたちと共に授業をつくる私たちだ。
6本のレポートには報告と討論で各65分間を確保し、のべ20名を超える参加者全員で意見を交わした。討論の柱は、①家庭科の教科書を検討する②家庭科の授業はどこまで自主的に展開できるか③学校づくり、地域との連携に家庭科はどう位置づくか④社会のあり方を問う学びをどうつくるか であった。
①出版労連の報告は、「家庭科は、自分の生き方を自分で選ぶことができると教えられる、とても大切で面白い教科」と前置きし、教科書の価格適正化の取り組み、高校の教科書検定、デジタル教科書について報告した。最後に、教材を作ることこそ教師の仕事とまとめた。
②埼玉の報告(小)は、「小学校で担任が受け持つ家庭科は実際この程度の工夫しかできない。でも授業を工夫し始めると市販の家庭科ノート・テストが使いにくくなる」という実感で、何かをした・作ったという印象は「活動」なのでそれを「学び」にしていきたいと表明した。
中3は家庭科が週0.5時間。中身で道徳には負けたくないとする東京の報告(中)では、教科書の分析を通して、執筆者・編集者が頑張っているところ(家族のあり方、ジェンダー平等や性の多様性、子どもの権利条約、気候危機、防災など)を読み取る授業が生き生きと語られた。
③山形の報告(高)は、1年調理科生徒全員でリンゴを剥いてカットして煮る、実習の楽しさが生き生きと伝えた。生徒は自分が地域で生活していると実感できるだろう。豊かな授業実践の結果としての「選ばれる私立」、栄養学・食品学との関連などについて意見が交わされた。
大阪の報告(高)は、1000人が集う教会堂で、先輩が全員聖書・讃美歌を手作りバッグに収めている場面を想像させた。自分も作らなくては、作りたい、という意欲が湧くだろう。そこを、話術巧みな先生がわくわくする学習に仕立てていく。教材作りにも多くの工夫があった。
④高1の1時間だけ全クラスを担当している埼玉の報告(高)は、時間数が足りない中での授業づくり。「座学」前提、まず資料配布という授業スタイルに、「調べ合う」活動を入れた試みで、授業用プリントの整理や、デジタル資料の配布によって授業を補足し深堀りしていた。
まとめの討論では、「身近な生活の実態から社会との接続を行うことができるのが家庭科の強み」といった初参加者の感想もあり、家庭科の魅力と可能性を確かめ合うことができた。